アセンブリ言語の教科書

実際に買ってからひとつきくらい過ぎてしまったが、「アセンブリ言語の教科書」の話。はっきり言えば、私にとっては全くといって言いほど役に立たない本であった。しかし、それは私にとってである。この本は基本的に入門書であって、入門に必要なことをきちんと押さえているという点で稀に見る良書と言える。
近い時期に発売されている橋本和明氏の「いまどきのアセンブラプログラミング」が間違いだらけであることと比較して賞賛されていることが多い。それらの評価に異論を挟む気はないが、著者が理解しているかどうかや内容に間違いが多いことが本当に本の価値を貶めるとは思っていない。勿論、正確であることは重要なことだけれども、入門書にとって重要なことは読者を次のステップに進む気にさせるかどうかということがあると思う。だいたいこんな初級の本を買う読者など軟弱なもので、面白くなければすぐにやめてしまうだろう。
正確な知識に基づいて基本を押さえる「教科書」と、前提知識が曖昧ながらゲームを改造したりすることで目に見える楽しさを示す「いまどき」のどちらが良いとはなかなか言えないと思う。私自身の入門はコピープロテクトの解除から始まっている。当時PC9801シリーズが市場から消え始めていた。だから、PC9801用ゲームソフトが中古屋でえらく安価で買えたのだ。20個くらいは買ったと思う。今でも持っているが、いくつかは既に読めなくなっているかもしれない。その内の8つくらいにプロテクトが掛かっていたのを外したのがきっかけでアセンブリ言語を含む様々な知識を得た。フロッピーディスクなどという壊れやすいメディアが使われていた当時では、オリジナルディスクは保存しておいてコピーで遊ぶのが常識だったし、自然に知識を身に付ける道が用意されていたと言ってもいい。初心者がちょっといじるだけで目に見える形で結果がわかる改造というところからスタートするのは悪くないアプローチだと思うわけだ。動機さえあれば不正確な知識を補う手段などこのネット社会には大量に用意されている。

アセンブリ言語の教科書

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いまどきのアセンブラプログラミング―Windowsプログラム解析・開発の独習

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