涼宮ハルヒの憤慨

ライトノベル涼宮ハルヒの憤慨」を読んだ。私はラノベの中ではこのハルヒシリーズを高く評価している。アニメ化されたことで知った人も少くないだろうが、このシリーズは文章の巧さも重要な要素なので、原作小説で読むことを勧める。ウェブ上では結構沢山の紹介文があるが、あえて私なりにシリーズのあらすじをまとめてみることにする。
ストーリーの語り手は平凡な男子高校生キョン。(彼の本名は未だ明かにされてない。)彼の一人称視点形式で話は進む。高校入学初日のこと、入学式が終わって各クラスで皆が自己紹介することになる。その場面で涼宮ハルヒと名乗った女は続けてこう言った。「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」。ハルヒは日常を凄くツマンネーと感じていた。いくつもの部活にも参加してみたもののやはりツマラナイということで自分で部を作ることにした。拉致同然、あるいはなしくずし的に集めた人員の前で団(学校から認められてないので部とも同行会とも言えないので団ということにした)の目的についてハルヒはこう宣言する。「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶことよ!」
ここまでが「世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」(略称SOS団)の発足までの流れ。で、団員の内3人は実は宇宙人、未来人、超能力者であった。実はハルヒには世界を再構築するほどの超常的な力が備わっており、無自覚に彼らを呼び寄せた(もしかすると作りだした)のであった。しかし、もしハルヒがその力に気付くと世界の改変が本格的に始まって因果がメチャクチャなことになる。更に、ハルヒの思いつきや苛立ちで無意識に世界を微妙に改変してしまったりするので、ハルヒが思いつきそうなことを先回りして演出して無難な落しどころに誘導しようと皆で奔走する。
以上が基本的なあらすじ。
今回の巻「涼宮ハルヒの憤慨」はイヤミな生徒会長を用意してハルヒに難題をふっかけるという回である。誰もが思いつきそうな敵キャラとして横柄な生徒会長を用意して、それとの対立にハルヒの目を向けさせるという演出。
ハルヒの前ではありがちなシナリオを演出しながら、その裏舞台では超常現象に翻弄されて右往左往する二段構えの構成を綺麗に繋げるバランス感覚に関心する。ありがちなシナリオを「ありがちなシナリオとして演出している」という体裁を作ることで逆に裏舞台であるはずの超常現象の方に感情移入させる効果があるのではないかと思う。
文章としても特徴的な箇所がある。語り手であるキョンの会話は鉤括弧で括られていない。キョンの見たこと、感じたこと、考えたことの延長としてそのまま会話に繋げているのだ。これもまた、語り手の視点を読者の視点と同調させることで感情移入を誘う効果があるように思われる。団員の中で唯一超常的な属性を持たないキャラを語り手にしている点を巧く活かしている。
さて、今回の文章はいくぶん長くなったが、結局のところ言いたいことをまとめると、今回の表紙の長門有希はカワイイ。

涼宮ハルヒの憤慨 (角川スニーカー文庫)

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