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言葉にならない

小説を読んでいると、やはり職業作家の書く文章は凄いものだと思うことがある。 思い描いている情景、あるいは人物の心情などをいかに上手く言葉にするかというのがやはり作家の力量の見せ所というものだろう。

そんな風に思っていたのだが「安達としまむら」という小説を読んで、それはちょっと違うかもしれないと思い直した。 この小説では二人の女の子、安達桜と島村抱月の関係を中心にして物語は推移する。 視点がちょくちょく変わりつつも一人称形式で書かれている。

そして、登場人物が自分の気持ちに困惑する場面がしばしば書かれている。 その気持ちは何なのか、どうしてそんな気持ちをいだいたのかを言葉に出来ないでいることが描写されているのだ。 言葉に出来ない気持ちを言葉にしないことによって、しかし前後の流れから読者を登場人物に共感させることで言葉にならない気持ちを読者に伝えているのである。

こんな表現が出来るのかと実に感心した。

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