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制度設計とトレードオフ

家庭用の風呂場や便所の扉に錠をかけられるようになっている場合がある。 しかし大抵は外側から錠を開けることが出来るようにもなっている。 十円玉を差し込んでひねるだけで簡単に開く。 これでは錠の役目をはたしていないではないかと思う人もいるかもしれないが、この錠は「使用中に誤って扉を開けないため」のものであって、その機能は充分に果す。 悪意を持って押し入る者を防ぐことを想定したものではない。 そもそも家の中に悪意を持った者がいたらもう駄目だろう。

では家の内部ではなく玄関扉はどうだろう。 玄関の鍵だって複製は簡単だ。 ホームセンターなどで複製を受付けている。 そして複製のために鍵を持ち込むにあたって身分を提示する必要がないし、審査もない。 あまりに簡単なので不安を感じるという意見は何度か目にしたことがある。

どうして身分を確認しないのかというと、持ち込まれた鍵がどこの鍵かを複製業者が知ってしまうと余分に複製しておいて窃盗に用いるということが出来てしまうからだそうだ。 実際にやるかどうかは問題ではなく、何かあったときにいちいち疑いを持たれるのも面倒な話だろう。 また、単純に数の問題でもある。 複製業者に鍵を持ち込む者が悪意を持っていたとして、それで起こる事件は一件に過ぎない。 複製業者が悪意を持てばかなり大きな規模のものになる。 事件の数が少なければ良いというものではないが、多いよりは良い。 そう考えれば鍵の複製を依頼するのに身分証明が不要という制度設計には妥当性があるとわかる。

制度に不安を感じたとき、その制度でなかった場合と比較して考えてみるとよい。 先日は機械の設計におけるトレードオフの話を書いたが、それは制度設計にも言えるわけだ。

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