お潤い休み

私は香川県に生まれ育ち、両親もまたそうである。 父から聞いた話なのだが、父が子供の頃には雨の日の農業を休むことを「おーるい休み」と呼んでいたのだそうだ。 母は商業地の生まれなのでそれを知らなかった。 どういうわけかその日にはうどんを食べる習慣があって、父はそれを楽しみにしていたのだという。 休日に限らずうどんばっかり食ってるだろうに……、と突っ込んでおいた。

では「おーるい休み」とは何かというと、状況からして「お(うる)い休み」であろうと、それについてウェブ検索してみたのだが、驚くほど見付からない。 その言葉を使用している例すら見付からない。 かろうじてそれについて触れた郷土資料が存在するという情報だけが見付かった。

ウェブには大抵の情報があるような気がしていたが、そんなこともないという話である。 インターネットが普及する以前の情報は各地域の資料にあたらないとわからないことは多いのだ。 さらに言えば、地域情報にも限らない。 私はレトロなプログラミング言語 TL/1 について以前に調べたことがあるのだが、正確な情報はさっぱり見付からず、当時の雑誌を調べる必要があった。 コンピュータのことならインターネットに大抵の情報があるだろうと思っていたので、インターネットの限界を感じたのだ。

郷土資料を多数保管している図書館が資金不足で資料を破棄せざるを得ないという事例は少なくない。 その土地が積み重ねた歴史がそんなつまらない形で消えていくのは実に残念だと思うのだ。

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