土葬

現代の日本においては遺体(いたい)は原則として火葬される法律になっている。 しかし実際に日本のあらゆる土地で火葬が当然になったのはそう古い話ではない。 私の地元 (香川県西部の一地方) では 1950 年頃までは土葬が標準だったようだ。 (時期については聞き取った老人の記憶が元になっているのでそれほど正確ではない。 しかし今でも生きている老人の幼い頃に土葬が標準だったのはかなり確かな事実である。)

そしてその土葬に使われていた土地が私の自宅のすぐそばにある。 それほど大きな土地ではない。 民家がひとつくらいなら建てられるだろうかといった程度の面積である。 きっとこの土地には何百年かの間は延々と遺体が埋め続けられたのだろう。

今では特に何に使われることもなく細い木がたくさん(しげ)っている。 時期になれば少し彼岸花が咲いたりもする。 自治会の裁量でたまに伐採したりもしているようだ。

私にとってはごく当たり前にそこにある土地なので特に深く考えたこともなかったが、この土地に生える木の養分の(いく)らかは遺体に由来するものだったりもするのかもしれない。

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